超伝導 2011 12 18

 原子力発電所の事故を受けて、
つまり、多くの原子力発電所が休止中で、
夏に続いて、冬も節電でしょうか。
 こうした課題が出てくるのは、
原子力発電所の問題もあるでしょうが(発電効率)、
電力の送電効率の問題もあるでしょう。
 経済的な面も考えると、
送電線は銅線が最も効率がよいかもしれませんが、
「銅」でも、やはり電気抵抗があり、
距離が長くなればなるほど、送電ロスが大きいものとなります。
大金をかけて作った電力も、送電の途中で失われて、
その結果、節電というのも、むなしいものを感じます。
 こうなると、超伝導を真剣に考えていく必要があるでしょう。
しかし、超伝導を研究している学者も企業も少ないと思います。
超伝導そのものがわかりにくいのが、問題かもしれません。
 説明として、よくあるのが、
金属の結晶があり、金属原子が整然と並んで、
自由電子が移動するが、原子自体が振動していて、
それを阻害するというものかもしれませんが、
これでは、何のことが、さっぱり、わからないでしょう。
 「デートする電子」と考えれば、わかりやすいかもしれません。
大きな駅で、彼(彼女)とデートの待ち合わせ。
ところが、遅刻してしまいそう。
急いで待ち合わせ場所に行きたいが、
駅構内は、人ごみで、あふれている。
まっすぐ進めれば、早く着けるのに、
人ごみで、右へ左へ蛇行しながら、進まなければならない。
しかも、みんな動いているから、
左によけたら、ぶつかりそうになって、あわてて右によける。
そんなことをしているうちに、あなたは冬でも暑くなって、
待ち合わせ場所に着いた頃には、
余計なエネルギーを使ってしまい、くたびれている。
 金属の中を進む電子も、このような苦労をしています。
デートをしたことがない人は、電子の苦労をわからないかもしれません。
しかし、商談で急いでいる時も、このような抵抗感を感じるでしょう。
 こうした抵抗をなくすには、金属を冷やせばよいと思うでしょうが、
問題は、その温度です。
それは、マイナス273度で、その時、人ごみの動きは止まる、
いや、原子の振動は止まり(古典力学。量子力学では違う)、
電子はスムーズに進行できますが、
そのような温度は、実用的でもない上に、経済的でもありません。
最近は、高温?超伝導というものがありますが、
それでもマイナス200度以下です。
マイナス200度の電線は、困りますね。
 次に考えるのが、合金や化合物です。
新たな物質が、比較的高い温度で超伝導になるかどうか。
最近は、セメントを透明な半導体に、さらに金属に変身させる研究があります。
そういう斬新な研究が実を結ぶかもしれません。
 いずれにせよ、経済的なことを考えれば、
室温で超伝導を実現させる必要があります。
 ハードルは高い、しかし、メリットは極めて大きなものとなります。
電気抵抗がゼロということは、
大電流を流しても、発熱しないということです。
冬に、スマートフォンをさわると、暖かく感じることがあるでしょう。
「暖かくて、うれしい」と思っては駄目です。
その分、電気抵抗で電力を失っているわけですから。
 しかも、電気抵抗がゼロですから、
いったん電流を流すと、あとは永久に流れ続けるということです。
冬にスマートフォンで暖を取るよりも、はるかに大きなメリットがあります。
 ゲーム機でプレイステーション3のCPUは、
世界最高水準の能力でしたが、
問題は、発熱にあったと推定しています。
高性能なCPUにすればするほど、発熱は大きなものになります。
パソコンの自作マニアは、CPUにクーラーをつけなければ、
CPUの熱で目玉焼きができると言っています。
今のCPUは空冷で冷やしていますが、静かな部屋ではファンの回る音がするでしょう。
 超伝導は、驚異的な産業革命を起こすでしょう。
電気抵抗がゼロだから、発熱しない。
しかも、いったん電流を流すと、あとは永久に流れ続ける。
大電流を流しても、発熱しない上に、永久に流れ続ける。
今のように貧弱な磁石ではなく、とてつもなく強力が磁石が作れます。
 磁石というと、普通の人は、学校の理科の実験を思い出すでしょうが、
実は、磁石は、身近に、たくさん存在します。
ハイテク機器には、磁石があると思ってもよいくらいです。
もちろん、産業用にも、磁石は重要な存在です。

透明金属 2011 9 11

書名 透明金属が拓く驚異の世界
著者 細野 秀雄  神谷 利夫  ソフトバンク クリエイティブ

 透明な金属というと、違和感を感じる人が多いでしょうか。
確かに、金も銀も銅も、どう見ても、透明ではありません。
身近な金属で、透明なものはないかもしれません。
 しかし、現代社会は、透明金属で成り立っていると言ってよいでしょう。
液晶テレビは、透明金属を必要としています。
 さて、液晶テレビが、
どのような構造になっているかを書くと長くなりますので、
この本から引用しましょう。
「液晶に電圧を加えるだけならば、
銅のような普通の金属をつなげれば簡単ですが、
普通の金属は光を透さないということです。
 液晶テレビの場合には、
後ろにあるライトの光を透さなければならないために、
普通の金属を使うことができません。
 透明な金属は、電気と光の両方を通す必要がある用途に、
なくてはならないものです」
 この本で興味深い章は、
「第7章 ガラスが高性能の透明トランジスタに変身」でしょう。
これで、窓ガラスが、あるいは車のフロントガラスが、
ディスプレイに、いやコンピューターそのものになると思います。
要するに、ガラス・コンピューターが出現するでしょう。
 次に、感動的な章は、
「第8章 セメントを透明な半導体に、さらに金属に変身させる」でしょう。
これを読んで、「材料科学」に興味を持つ人が多いと思います。
 さて、透明になる金属の話は、別の本にも紹介されています。
「水素がわかる本」(小波 秀雄 工業調査会)
ある金属に水素を吸蔵させると、透明になるという実験です。


































































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